+R Story Vol.10 「JR信濃町駅から徒歩5分、入館料無料のとある博物館」

放課後プラスアール

+R Storyでは地域の人々がエシカルな取り組みについてどのような考えを持っているのかを発信するコラムを配信しています。

第一弾は渋谷教育学園渋谷中学高等学校の学生が彼ら彼女らの視点で、エシカルな取り組みについて取材をして感じたリアルな声を発信しています。Vol10はいおさんのコラムです!

「JR信濃町駅から徒歩5分、入館料無料のとある博物館」

 はじめまして。渋谷教育学園渋谷高校のいおです。

突然ですが皆さん、ヴィオラという楽器をご存じですか?ヴァイオリンの少し大きいものと言ったら分かる方も多いかもしれません。私は中学に入ってからこの楽器を始め、楽器そのものに興味を持ちました。これが、このコラムを書くにあたって民音音楽博物館に取材させて頂いた理由です。実際に伺ってみて初めて知ったことや感じたことなどを、SDGsとも関連させながら紹介したいと思います。

SDGsってなんだっけ?

 まず最初に、SDGsについて簡単におさらいしましょう。SDGsとは、2030年までに達成すべき持続可能な開発目標のことです。17の目標があり、その1つ1つに更に詳細な目標が定められています。今回軸となるのは4番の「質の高い教育を皆に」と、その中の「様々な文化があることを理解する」というものです。

音楽博物館ってなにを展示してるの?

「音楽博物館」と聞き、皆さんはどんなものを想像されましたか?博物館である以上、何かを展示しているはずですよね。では、どんなものが展示されているのかご紹介します。

 展示されている楽器は主に3種類です。1つ目は、「モーツァルトが愛用していたものと同じタイプのピアノ」など、そのどれにも由緒がある鍵盤楽器。2つ目は、「手回しオルガン」や「オートマタ」といった、おとぎ話に出てきそうな自動演奏楽器。3つ目は、尺八など、日本人には馴染みの深い楽器から、一見すると楽器なのかと目を疑うものまで多種多様な民族楽器。これらの楽器が「ただ展示してあるだけ」ではないのが民音音楽博物館です。

 例えば、鍵盤楽器や自動演奏楽器。これらは、1時間に1回、約15分間の定期演奏があり、スタッフの方が目の前で弾いて下さるのです。これらの楽器を生で聴くことができる機会は、なかなかありません。考えてみて下さい。こういった楽器は古くに作られているものが多いのです。古いということは、壊れやすく、修理も大変だと思いませんか。学芸員の方が、楽器はとても繊細な上に、現在では取り扱っていない部品が修理に必要になることもあると仰っていました。また、楽器の破損を防ぐため、定期演奏の時以外はほとんど弾かない、とも仰っていました。このようにして、実際に展示・演奏することによる「教育」と、楽器の収集・保存による「文化の保存」を両立させているのです。

また、この定期演奏はスタッフの方が1つ1つの楽器について説明して下さるので、クラシックに明るくない方でも楽しめるのではないかと思います。実際、クラシックってよく分からないなあ、と漠然とした苦手意識を抱えている私でも楽しめました。


 また、民族楽器の展示では、どこの地域の楽器かで分類されているブースもあり、外国の方が訪れても楽しいこと間違いなしです。そして、体験コーナーも設置されているので、実際に弾いてみてその不思議な音色を是非感じて頂きたいです。

(上:手回しオルガン 下:民族楽器の展示)

博物館なのに図書館?

 実は、民音音楽博物館にはライブラリーもあります。楽譜や図書など、音楽に関する資料が揃えられているライブラリーは、予約さえすれば誰でも無料で利用できます。楽譜を借りることが出来るというのは、とても魅力的だと思います。何か音楽をやりたいが、楽譜を買うのは気が引ける、といった人に是非オススメしたいです。また、数多くの資料を保存しているので、個人だけでなくテレビ番組制作などにも利用されることがあるそうです。ライブラリーは資料の保存や公開を通じて教育を支えているのです。

民族楽器のコンサート、人生で1回は行ってみたくない?

 ここまで紹介してきた民音音楽博物館は、民音(一般財団法人民主音楽協会)の事業の一つです。そして民音の別事業として、コンサート事業を通じた音楽交流、というものがあります。これは、民族楽器の演奏者を招き、様々な地域の音楽を全国各地で公演するというものです。もちろん一般向けのものもありますが、小学校や中学校などを対象にしたものもあります。教育において、子供達の参加は非常に重要です。また、音楽は演奏者と聴き手のどちらかが欠けてしまうと衰退してしまうと思います。だからこそ、双方を繋ぎ、守るこの取り組みはとても大切だなと感じました。

社会と個人に寄り添う博物館

 こうして民音音楽博物館は音楽の面で文化を守りながら、それをより多くの人に知ってもらう為の取り組みを行い、社会貢献を果たしています。また、楽器の形や模様を見たり、音色を聴いたり、民族楽器を弾いたり、資料を借りて調べたりと、様々な楽しみ方ができます。一度足を運んでみれば、自分なりの楽しみ方が見つかるのではないでしょうか。