+R Story Vol.9 「宮沢賢治と自然」

放課後プラスアール

+R Storyでは地域の人々がエシカルな取り組みについてどのような考えを持っているのかを発信するコラムを配信しています。

第一弾は渋谷教育学園渋谷中学高等学校の学生が彼ら彼女らの視点で、エシカルな取り組みについて取材をして感じたリアルな声を発信しています。Vol9はいかさんのコラムです!

宮沢賢治と自然

 渋谷教育学園渋谷高等学校のいかと申します。引継ぎの必要性を感じる日々を送っています。この記事では、宮沢賢治記念館の学芸員である牛崎さんにご協力いただき、宮沢賢治の作品にみられる本人の考え方についてまとめました。

1章 賢治が見た美しさ

 宮沢賢治という小説家がいた。37歳という短い生涯のほとんどを岩手の自然の中で過ごし、そこで得た自然や風景を「心象スケッチ」という形で今の世に残した。

彼の代表作は挙げたらきりがないが、まずは一つ「やまなし」を紹介したい。小学校の教科書に掲載されることも多く知名度の高いこの作品。蟹の親子が、やまなしを追いかけるストーリーを、色彩表現を用いて美しく表現している。この作品を、賢治は「幻燈」と呼称した。これは、フィルムに写した像を光で照らし、映写幕に映す技術だ。現実とは少し違う世界。彼にとっての幻燈は、まさにその心象スケッチのことだろう。

2章 賢治が見た恐ろしさ

自然が美しいだけではなく恐ろしい面も孕んでいるということも、賢治はわかっていた。

その代表例が、「注文の多い料理店」言わずと知れた名作であるこの作品は、恐ろしいが滑稽な面のある山猫と、それに対して恐れおののく人間との対比を痛烈に描いている。またそれとは対照的に、「なめとこ山の熊」では生きるために猟をしながらも共存している小十郎と熊たちの交流を描いている。自然の強靭さを知っていたからこそかけた二作である。

3章 心象スケッチが映す異世界

心象スケッチは、この世界にとどまらない。

「楢ノ木大学士の野宿」は、山に野宿することになった楢ノ木大学士が雷竜(ブロントサウルス)に襲われるというストーリー。「銀河鉄道の夜」は、二人の子供ジョバンニとカムパネルラが星をめぐる鉄道に乗り、本当の幸せを探すお話。どちらも発想がこの世界を超越し、未知のものを生み出している。

4章 賢治が見た自然

牛崎さんは、宮沢賢治はおよそ100年前の人で、当時の「環境」についての考えは現在とまるでちがう。そもそも賢治作品にその言葉はでてこない、と話した。

賢治作品の多くは、イーハトーブ(賢治が名付けた岩手県)の自然と自らの心の対話によって生まれたといえるだろう。その中での注目は賢治の先見性で、例えば「グスコーブドリの伝記」では、噴火しそうな火山を止めに行く青年グスコーブドリの物語だが、ここに地球温暖化とCO2の関係が描かれている。地球の急激な温暖化は20世紀後半からの話にも関わらず、賢治はすでに現代の地球規模の環境問題と直結する内容を盛り込んだ作品を発表していたことに驚かされる。

賢治の利他主義の思想など様々に解釈される作品だが、その中でも、彼が自然に対して深く、真剣に向き合っていたことは、言うまでもないだろう。一度宮沢の作品を読んでみてほしい。

あとがき

いかさんのコラムはいかがだったでしょうか?+R Storyはシェアリングステーションのリユース容器を利用することで、別のコラムを読むことができますので、また是非ご利用ください!