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+R Story Vol.1 「今、若者に伝えたい。〜「ヴィーガン」という食のあり方〜」

放課後プラスアール

+R Storyでは地域の人々がエシカルな取り組みについてどのような考えを持っているのかを発信するコラムを配信しています。

第一弾は渋谷教育学園渋谷中学高等学校の学生が彼ら彼女らの視点で、エシカルな取り組みについて取材をして感じたリアルな声を発信しています。

今、若者に伝えたい。〜「ヴィーガン」という食のあり方〜

「ヴィーガン」

ここ数年で一気に街中やSNSで見かけるようになった言葉だ。

多くのチェーン店やレストランでヴィーガンメニューが取り入れられるようになり、首都圏を中心にヴィーガン専門店が増加している。

スーパーでは代替肉として知られる大豆ミートの商品が目立つようになった。

SNSでは自身がヴィーガンであることを公開し、ヴィーガン向けのメニューを発信する人も少なくない。

だが実際、「ヴィーガン」ってなに?と聞かれたときに自信を持って答えられる人は少ないのではないだろうか。

ヴィーガンとはお肉を食べない人のことを言うの?

ヴィーガンとベジタリアンの違いはなんなの?

そもそもヴィーガンは何のためのものなの?

このような疑問を多くの人が感じているのではないか。

そこで近年話題になっているヴィーガンの秘密を追うため、日本ヴィーガン協会の沖縄支部長を務めておりご自身もヴィーガン歴16年である齋田実美さんに、渋谷教育学園渋谷高等学校に通っている筆者がお話を伺った。

今回取材をさせていただいた日本ヴィーガン協会理事・沖縄支部局長の齋田実美さん

インタビュアー:まず初めに実美さんがヴィーガンになられたきっかけを教えてください。

実美さん:2007年に、『はちどりのひとしずく』という本と出会った事がきっかけです。

その本には南米アンデスの古い物語が書いてあり、森で起こった火事を消そうとハチドリが一滴ずつ水を山に運ぶシーンがあります。そのときに他の動物に「そんなことしてなにになるのだ」と馬鹿にされたハチドリが答えた、「私は、私にできることをしているだけ」というセリフに心を動かされました。

世の中には大変な問題が沢山あり、でも私1人では何もできない。そう思い込んでいた自分に、「私は私にできる事をすれば良いのだ」という事をこの本は気づかせてくれました。

またこの本には、世界中の穀物生産高を人類全員に分配すると全員がお腹いっぱい食べる事ができる収穫量があるのにもかかわらず、先進国が消費するための家畜の餌としてその穀物の多くが使われてしまっているために飢えがなくならないのだという事実も書いてありました。

この本を読んだ日に、私は自分が毎日地球のためにできることとして、「お肉」を食べるのをやめようと決意し、今現在に至ります。最初の3年間はお肉をやめただけでしたが、3年後、ヴィーガンというライフスタイルを知って、ヴィーガンになりました。

インタビュアー:ヴィーガンになってからご自身の健康の変化はありましたか?

実美さん:ただお肉をやめた最初の3年間は特に目立った変化はありませんでした。しかしヴィーガンになってからというもの、私の健康状態は大きく改善しました。ヴィーガンになる前私は外資の企業に勤めており、かなりの激務だったため体調を崩すことも多い日々でした。入院していた時期もあり、年間の医療費は100万を超えていました。しかしヴィーガンになってから、なんとその医療費は一切なくなりました。免疫力が上がり平均体温が1度以上上がって、全く風邪を引かなくなったのです。以前では考えられなかったことでした。

インタビュアー:それはものすごい変化ですね!

気になったのですが「お肉を食べるのをやめる」ことと「ヴィーガンになる」ことの違いはなんなんでしょうか?

実美さんヴィーガンは「動物性由来の食品を摂取しない人」のことを言います。

動物愛護の観点から誕生したベジタリアンの考えがもとです。

ベジタリアンは主に動物のお肉を食べない人のことを言うのですが、卵や乳製品も動物であるという考えが広まり、ベジタリアンが進化してヴィーガンという考え方が誕生しました。

ヴィーガンの中には食生活だけにとどまらず、毛皮製品の使用や動物園や水族館、サーカスなど動物が酷使されているところに行くことをやめる方もいらっしゃいます。

動物からの搾取をやめよう、というのが基本の考え方です。

インタビュアー:つまり、ヴィーガンは動物愛護が目的でなる方が多いのでしょうか?

実美さん:一番初期のヴィーガンが誕生したころはそうだったのですが、近年はヴィーガンの考え方が多様化し、宗教的な理由や自身の健康、地球環境のためになる方も多くいらっしゃいます。

先ほど述べた通り、私自身もそのうちの一人です。

ヴィーガンは元々動物の尊厳を守りたいという、動物愛護精神から発足しています。

そのために、ヴィーガンの方達の中には過激な動物愛護運動をされる方達もいます。

彼らのアプローチも心が痛いほど理解はしますが、私たち、日本ヴィーガン協会のアプローチとは違います。

私たちは、より多くの方にヴィーガンというライフスタイルに共感を持ってほしいと考えています。

ヴィーガンという選択も、楽しくて、美味しくて、動物たちも地球環境もHAPPYな選択なことを知ってほしいと思っています。

インタビュアー:その日本ヴィーガン協会はどのような活動をされているのですか?

実美さん:まず現在の理事代表である室谷真由美さんが、2020年のオリンピック前にこれから海外からの観光客が増加し、ヴィーガンに関する専門的な知識や情報が必要になると予測される中で、日本にヴィーガンの協会がないことに気づき、発足されたのが日本ヴィーガン協会です。

私たちが積極的にヴィーガンの店舗さんに出向き、その活動をSNSで発信する事で日本でのヴィーガン店舗の認知度を上げていったり、そのお店にヴィーガン認証(正しい知識を持ってヴィーガンの商品を提供している店舗や商品に渡す認証マーク)をお渡ししたりしています。

今までで、日本でヴィーガン認証を受けた店舗の数は200を超えており、その数は近年どんどん増加しています。

また、ヴィーガンメニューを取り入れたいホテルやレストランにアドバイスや教育なども行い、ヴィーガンの方が安心してその商品を口にできるような環境のサポートをさせていただいています。

まだまだ活動が認知されていないので、SNSでの発信を通じてより多くの人に私たちのことを知ってもらいたいと思っています。

インタビュアー:では最後にヴィーガンの方から伝えたい、このコラムを読んでいる方に対してのメッセージがありましたらお願いします。

実美さん:まず伝えたいのは、みなさん自分の食にもっと関心を持って!!ということ。

食べ物は自分の体を作るだけでなく、自分の将来、そして地球全体の環境につながっています。

温暖化が進み地球が限界を迎えてしまうまでのタイムリミットを表すClimate Clock(気候時計)は、あと6年しかありません。

平均気温1.5℃上昇に達すれば、大変な思いをするのは皆さんなのです。

そしてこの気候問題と畜産は非常に密接に、大きく関わっています。

海外ではこれらの問題についてたくさんの論文や番組、ドキュメンタリー映画が出されており、小さな子や大学生など若い人たちを中心に環境問題について真剣に向き合っています。

海外ではヴィーガンの人口が急増し、多くの人が自分の食生活を見つめ直しています。

なので英語の文献が読めるならどんどん読んで、関心を持ってください。

もし食品会社のスポンサーが付いていた場合、日本のテレビでは「お肉を食べないで!」などは到底言えません。

また日本は言語の問題でまだまだ情報が少なく限られており、人々の認識が広まっているとは言えない状況です。

なのでまずは畜産がどれだけ環境に影響を与えているか、とにかく知ってほしい。

そしてそれを知った上で、皆さんそれぞれが考えてほしい。

そう思います。

インタビュアー:このことを皆さんに発信し伝えていくことが本当に重要ですね。

実美さん:その通りですね。実は私も、毎月4回にわたって10時間の食についてのオンラインレッスンを行っています。ヴィーガンだけではなく畜産と環境問題、現代の食生活について幅広くお話をさせていただいてます。高校生や大学生にはお手頃な金額で提供しているので、ぜひ少しでも興味を持っている方は受けて頂ければと思っています。

オンラインレッスンの詳細はこちらから

インタビュアー:それはぜひ参加してみたいですね!

改めまして本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。

まとめ

実美さんもおっしゃっていた通り、地球温暖化や食料不足などの問題は畜産と切っても切り離せない関係だ。

家畜のゲップ等が温暖化に影響を与えているだけではなく、飼育するために必要な穀物や土地を確保するために大量の森林が伐採され、また農薬の使用によって土壌汚染も起きている。

家畜の糞尿による水質汚濁や、餌の生産や食肉処理の際に発生する大量の二酸化炭素も見過ごせない問題だ。

だが私は、この事実をテレビで偶然見かけるまで全く知らなかった。

地球温暖化は工場や自動車からの排気ガスなどの要因が主だと思っていて、まさか自分たちが毎日お肉を消費していることが温暖化の要因になっているとは夢にも思っていなかったのだ。

しかしこの問題を認識してからは、動物性由来の食品の摂取を少しずつ減らすようになった。

牛肉や豚肉を食べることは月1程度になり、卵は一切摂らなくなった。

完全なヴィーガンにはまだ程遠いが、私のこの毎日の積み重ねが『はちどりのひとしずく』のように、地球環境に「ひとしずく」でも貢献していることを願っている。

このコラムを読んでいる皆さんにとって、この記事が自分の食生活を見直す一つのきっかけになれば幸いである。

あとがき

コラムいかがだったでしょうか?+R Storyはシェアリングステーションのリユース容器を利用することで、別のコラムを読むことができますので、また是非ご利用ください!

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